ひきしおどきにむかいかぜ

特に書くべきことは見つからないのですが、いつまでもメインジャンルってわけじゃないホグワーツ記事がトップにあるのもなんだか落ち着かないので無理やり更新します。
新年度始まってそろそろ1ヶ月が経とうとする頃ですがお元気でしょうか。進学や就職転職で環境変わって不安から五月病になってしまう人もあるかもしれません。自分も今年度から仕事の関係で環境がかなり変わり、なんとかやれてはいるものの慣れないことだらけでうまくできずに不甲斐なく思うことは多々あります。
気分が塞ぐときの対処法は人それぞれだと思うけど、自分は似た境遇の物語や歌に浸るタイプです。そうすると自分の置かれた状況を客観視できてどう動くべきか見えやすくなる気がする。ということで(?)所感メモを兼ねて自分が好きな曲調明るめで苦しみ歌った絶望の歌コレクションを紹介していきたいと思います。ここでは音楽性には触れず物語としての歌の内容だけを取り上げます。
根暗だからって別に進んでそういうテーマの歌を好んで聴いているわけではなくむしろ普段聴くのは歌無しの曲が基本なのですが、昔からふと耳について気に入った数少ない歌の内容を調べたら見事に苦しみを歌ったものばかりが揃っているのです…。リンク貼ってあるのでもし気になるのがあったら暇なときにでも聞いてみてくださいな…

目次

曲名クリックでジャンプします

  1. 衝動買い – 好芻
  2. 大遅刻 – 好芻
  3. Something Comforting – Porter Robinson
  4. A Turtle’s Heart – Mili
  5. Cloud Nine – A-bee
  6. Just About Enough – Sarina Paris
  7. Driftwood – Travis
  8. Passion – 宇多田ヒカル
  9. Cave In – Owl City
  10. America 2 – The Midnight
  11. Ebb & Flow – Off the Hook

自己嫌悪系

『衝動買い』好芻 (2023)

100円ショップの店内で流れていて「なんか珍しい歌詞だな」と気になりShazamで発見。タイトルを見て店のBGMに選んでいたのだろうか。音源の感じから80〜90年代あたりの曲かと思ったらつい最近出た歌でした。PVもその時代を意識したアニメで良い…(詳しくないけどJapanese city pop系のイメージでよく使われるこういう色調・背景ってアニメ版セーラームーンがすべての元ネタなんでしょうか?)。
素朴な口調でさらっと歌われているけど、恋人に振られ頭痛も出てきて傷心を埋めるためにバッグを衝動買いしてカードの上限金額を超えてしまっているというだいぶしんどい状況です。この感じからすると同僚か友達に誘われて行ったランチというのもたぶん都心のお高い店のはず。親から聞いた知識や写真でしか知らないバブリーな生活ぶりが窺えます。
とか言って自分の生活や行動様式から遠すぎてイメージの解像度が低いし恋愛感情とかその手の交際経験がなさすぎてそういうテーマに関しては完全に他人事という目でしか見られんのですが、そこに金銭的ダメージ要素が加わると話は別です。情とか衝動でよく考えると特に欲しくないものに高額な出費をしてしまったときの後悔はリアルにわかるので、バカみたいでしょう…という自嘲にそういうことあるよな〜と共感するし、他人から自分がもういらないと思われていたということに気づいたという部分に二重で沈められるのでした。
けどこの歌も、朝日の中さよならよと笑顔でふっきれている様子が描かれているので主人公は大丈夫だなという安心感があります。浪費癖がありちょっと見栄っ張りで立ち直りが早いこの歌の主人公は…イカですね(無理やりこじつけSplatoon妄想)


大遅刻』好芻 (2023)

上の『衝動買い』をYouTubeで検索した時に一緒に見つけた同ユニットの歌。これも一昔前をイメージしたレトロな音源と小道具・映像で構成されています。自分にはこっちの絶望の方がより具体的で刺さりました。
主人公は結婚も考えたくらい長年付き合った恋人を引き止めにタクシーで高速に乗って空港に向かおうとしているが、この時点でフライト時刻はとっくに過ぎてしまっている(!) なーにどうにかなるという油断と本当にこれで終わりなのかもという不安の間で行ったり来たりしているうちに実行に移すのが遅れてしまった。運転手に無理言って飛ばしてもらいながらも、自分は昔からこうだった、間に合わないとわかってからじゃないと動けないんだと悟りながら過去を振り返っている。これは夢で本当はいま自分は恋人が運転する車の助手席に座って一緒にドライブしているのだと現実逃避したくていつもの曲を聴くけど、タクシーのあのビニールめいた匂いに容赦なく現実を突きつけられるのであった…。
つらい。嗅覚という五感中で一番嘘つかない感覚を持ってくるのがリアルだし涙が出そうな感覚をそのまま書かずに目が眩むと表現しているのも良い。
さらには間に合わずに件の飛行機が飛んでいく様子を高速道路から目にしつつ、無意味な試みになると半ばわかっていたタクシーの高額な料金表示を見て自分の愚かさを改めてわからされている。自分はまたやっちゃったんだなあ
泣きっ面に蜂!金銭を絡ませることで自分のような恋愛わからん系人間にも後悔と絶望をリアルに感じさせることに成功しています。歌は自嘲のセリフで終わっていてこの人は大丈夫なのか…?と思うけどPVではその後ラーメン屋で食べてる様子が描かれているのでこれも主人公はいつかまた立ち直れるのでしょう。見通しが甘くて無駄な出費が多くてなんだかんだたくましいこの歌の主人公もイカですね(以下同文)


『Something Comforting』Porter Robinson (2020)

YouTubeの自動再生で流れてきた曲でした。ダンスミュージックになりそうな清涼感ある曲調だけどこれも歌詞はしんどい内容です。(※たぶん “Cause getting made you want more, and hoping made you hurt more” の和訳字幕が間違っていて正しくは「手に入れればもっと欲しくなり、望めば望むほど傷つく」なニュアンスのはず)
インタビュー録によると一度デビューに成功していながらその後創作ができずに苦しんでいた時期に書かれた曲とのことでした。それまで苦もなくできていたことが急にできなくなる…創作活動あるあるですね。もうこの先ずっとできないままなのかという不安とか待ってくれている人がいるのに応えられない焦りとかいろいろ想像できる。
エレクトロはクールでポップで無機質な雰囲気の電子音で作られていながらも作者の悩み苦しみとか内向的でネガティブめなメッセージが込められていることが多い印象なところが面白いジャンルだなと思っています。この孤独でまじめで内向的な感じはタコかな(全部にやるつもりか?)


『A Turtle’s Heart』Mili (2018)

これもYouTubeの自動再生で流れてきた曲でした。音楽はあまり自分から探しにいかないのでだいたいいつもそういう出会い方ばかりです。上のタイポグラフィー動画はファンメイドだけど歌詞のイメージがわかりやすいのでこちらを埋め込み。
タイトルは本体が死んだ後も長いこと脈動をやめずに動き続けるカメの心臓にちなんだもの。もしもし亀よ亀さんよ…の童謡「うさぎとかめ」のイメージも取り入れられているそうです、言われてみればたしかに似ている。ユニットの全曲を通して交錯する物語になっているタイプの作品群らしく一個だけ抜き出して書くのもツッコミ入りそうだけど飽くまでも知識ゼロかつ単体で聴いた時の感想として。
どうも主人公はずいぶん前に恋人に先立たれたらしい。自分も死にたいと思っていながら死ぬことはできず、かといって理解者を探すこともなく延々引きこもっている。時間が止まったまま置いて行かれて年取っていくばかりの自分に絶望しており、先に逝ってしまった恋人に殺してくれよ〜と嘆いている…だいぶ救いがありません。没後ずっとこの精神状態が続いているなら健全じゃないけどいっそここまできたらこのままずぶとく死ぬまで生きていけるような気もする。臆病で内に篭りがちで諦めが強いこの主人公は…タコですね(?)

愛想尽かし系

『Cloud Nine』A-bee (2012)

きっかけがなんだったか覚えていませんが昔PVを見ていいなと思い買った曲です。これも破局の歌ですが自己嫌悪ではなく相手に愛想を尽かしているパターン。
あんなに仲良くやってきたのに今はもう口を開けば言い争いばかりになり、一応その後に傷付けるつもりはなかったごめんと謝罪はあるけどそんなのはこだまみたいなものでとても本心からの言葉とは信じられない。一緒にいるのにも疲れ果てて楽しかった頃の思い出は死につつある。安らげる場所探して遠くに逃げてしまいたいけど安息の地(cloud nine)はどこにあるのだろう?
ああつらい。大事にしていた思い出に傷がついたり逆に忘れ去ってしまいたくなったりするような経験に見舞われるのはつらいものです。(on) cloud nineとは「有頂天/至福/夢見心地/最高に幸せな」みたいなとにかく幸福な状態をいう表現ですが、歌の中ではとてもそんな状態ではなく遠い願望であるところが悲しくて良い。境遇的には先に書いた『大遅刻』に似ているけど深刻さ切実さのトーンがちょっと違う気がするしこの後自由になれたのか心配になる感じもある。苦しい現実からの逃避を切望しているこの主人公は…タコですかね。


『Just About Enough』Sarina Paris (2001)

これは子供の頃に洋楽のラジオで流れてきて耳にとまり、なんていう曲なんだろうと知りたくて試しに繰り返し聞こえるフレーズを入れてみて無事見つけられた歌でした。メロディーが耳に残っていいなと思ったけど歌詞はやっぱりこっぴどい内容だった。引き続きPVで見ての通り、相手に愛想を尽かし系破局の歌です(身も蓋もない説明)。
主人公はうすうす嫌気が差しだしていたようだけど恋人の浮気が発覚したのをきっかけにもう結構!あばよ!とふっきれたっぽいです。私はこんなに好きで尽くしてきたってのにそれを全然気にも留めず逆に泣かせるようなことばかりするお前なんてもういらない!という相手を真っ向から非難する強さがありますね。失恋したときはこの歌で踊り狂ったら気持ちよさそう。気持ちと行動の切り替えがうまいこの主人公はイカっぽい気がする。


『Driftwood』Travis (1999)

どんどん年代を遡ってるんだが大丈夫か?当時の自分が聞いたのはAselin Debisonによるカントリー調のカバーだったのでこちらを埋め込み。こちらも明るい曲調で愛想尽かし系ソングです。
いつまでも選択せずにふらふらさまよっているお前は空っぽで役立たずの流木だよ、流れ流れてしまいには粉々に砕けるんだ、こんなことになるなんて思ってもいなかっただろう、私も残念だよ…という散々な内容です。どういう動機で作られたのかわからないけど作者にはなにか思う出来事があったんだろうなあということだけはわかる。長いこと見守ってきたけどお前は変わらないんだな、残念だ…とあっさり突き放すこの主人公は……イカと見ました。タコはろくでなしもなんだかんだ世話してしまいそうなので(偏見)

逃避系

『Passion』宇多田ヒカル (2005)

未プレイにつき知らないのですが『KINGDOM HEARTS II』の主題歌だそうですね。その当時に何かで流れているのを見て気になった歌でした。
PVも曲調も歌詞の内容も幻想的な感じで、なんとなく昔仲良かった・今はもう会えない相手を懐かしんでいるんだろうなあ…と思って聴いていたところで最後いきなり「ずっと前に好きだった人 冬に子供が生まれるそうだ」「年賀状は写真付きかな」とか超具体的かつ日常的な現実が飛び出してびっくりした覚えがあります。その違和感でここまで印象に残ったといえる。
つまり昔想い寄せていた相手ともう二度と以前のように話したりすることはできない、その人は誰かと所帯を持ってしまったからという内容? そういうこととは縁遠すぎて想像つかないけど察するにとても寂しいことなんでは…という漠然とした絶望を見せてくれた歌なのでした。現状知ってなお内面世界に現実逃避しているこの主人公はタコっぽい。


『Cave In』Owl City (2009)

これはリリース当時、無謀すぎるCDジャケット買いをして出会った曲でした。ストライクゾーンが狭すぎるため同じ作家内の作品でも継続的に好きになることは珍しいのですがこの作家の曲は好きなのが多いので良い出会いでした。活動再開しないのかな〜
歌が作られた経緯は先に挙げた『Something Comforting』によく似ていて、当時人気が出だしたけどストレスで不眠症ぎみだった作者が内心を表現しようと生まれたものだそうです。これも爽やかなエレクトロで歌詞の内容にも共通点が多いけど、『Something Comforting』が苦しみから逃げずに向き合おうとしているのに対してこちらはうまいこと逃げ出そうとする元気と軽さがあります。
“I’ve had just about enough of quote diamonds in the rough, because my backbone is paper thin”とここにもjust about enoughが出てきましたね。なんとなく自分がどういう心境のとき歌を聴こうとしているのかわかってきたようなそうでもないような。地下洞窟から出してくれ〜っと叫ぶとにかく逃げ出したいこの主人公もタコっぽい(※脱走はタコのお家芸だと思っている節がある)


『America 2』The Midnight (2018)

何年か前にもここで紹介したことがあったけど何度でも書くぜ。数年前に見つけて気になり動向を見ているバンドの爽やか絶望的逃避行の歌です。
芽が出ないまま28歳になってしまった音楽をやっている主人公は一気奮発して彼女と一緒にここを出ることにした。7月4日に車を盗みギターも質に入れて夜を徹して走り続けた、アメリカンドリームを探しに…という内容だと思うけどニュアンス合ってるかは自信がありません。とにかくここでないどこかへ行きたい、そこには輝かしい何かがあるはずと信じて始めたそんな無謀な逃避行がどうなるかは想像がつきます。作中世界観からしてたぶん「イージー・ライダー」(1969)のような結末が待っているに違いない。でも歌の中では希望に満ちた爽やかな光景だけが切り取られているのがいとあはれなり。この向こう見ずで衝動的な主人公はイカ


『Ebb & Flow』Off the Hook (2017)

いやテンタクルズやないかーいというツッコミどころですが、英題がEbb & Flow(潮の満ち引き)となっているこの歌も絶望からの脱出を歌ったものなんではないかとわりと真面目に思っています。
テンタクルズに関してはOff the Hook(危機一髪)という英語版ユニット名や各歌の英題、歌詞が英語に聞こえること含めて英語版の方が正しくユニットや歌のテーマを伝えているような気がしてなりません。(特に「フルスロットル・テンタクル」=「Ebb & Flow」、「ミッドナイト・ボルテージ」=「Shark Bytes」とかは絶対に英題の方がどういう内容を歌っているのかタイトルから想像つきやすい・わかりやすいと思うんですよね…)
上の埋め込みはファンメイドの空耳歌詞ですが当たらずとも遠からずな内容なんではと感じます。ヒメは所属していたバンドから追放されてひとり自暴自棄になっていたところ、イイダは好きな仕事ができない部署に送られた後シオカラ節のグルーヴに目覚め全部を捨てて地上に脱走したところ…というわりと絶望的にまっさらな状況から結成されたユニットだし、“Don’t get cooked… Stay off the hook!”という決めゼリフも合わせてそういう逆境の打破を歌ったものが多いのではないかと勝手に妄想しているのでした。いわずもがなこれはイカ&タコですね。

長い

ただ感想を書き散らしているだけなのに予想以上に長くなってしまった。こんなのを最後まで読んでくださっている方とかおられるのだろうか。一貫性なく独断と偏見で貼っているだけではありますが、もし何か気に留まる曲があったなら幸いです。
今年度はまだ始まったばかり、この先いろいろ大変なこともあると思うけどもう寒さは去ってこれから日は長くなるし気候は良くなるしまた連休も来るし、飛び石にできる未来の楽しみを見つけつつ生活頑張っていきたいものですね。

11

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。