きえたみらいとおもいでの

1月14日の絵日記より 理性はいつだって正しい…

先日上のパロディな落書き日記漫画を描いたのをきっかけに意識に上り、なんとなくメモしておきたくなったので唐突に、初期の原作『遊☆戯☆王』がわりと好きという話をします。(本当に唐突だな…)

※筆者はこのシリーズのファン評価・二次創作環境やカードゲーム関連などについては詳しく知らないまま書いています。これは本作を一つの漫画作品として見た場合の、ただの個人的な思い出感想メモです。

「遊戯王」シリーズは今やカードゲームのメディアミックス作品として一大コンテンツとなっていますが、高橋和希氏による原作漫画『遊☆戯☆王』は、もともとはカードゲームをメインに据えた話というわけではありませんでした。
基本は一話完結の読み切り型で、様々なおもちゃやボードゲーム、独自に考案されたゲームを介して身の回りに現れる悪人と戦い、勝ってこらしめ平和な日常を取り戻すという構成になっていました。主人公(の裏人格)がゲーム全般の達人だから「遊戯王」というわけです。設定や内容とも『三つ目がとおる』によく似ている印象を受けます(誰も言ってるのを見たことないけど古代エジプトに関する作中モチーフやキーワードの類似性、連載時期的にも作者は山岸凉子氏の『ツタンカーメン』にも影響を受けているのではないかと私は考えている)。その頃は絵柄もまだおなじみのあのピシッと尖った特徴的なものではなく輪郭も柔らかい感じで、一見すると別作品のようです。

漫画が連載していたのは私が小学生になっているかいないかくらいの頃だったか、知識としては友達の家で単行本をちらりと見たことがあったくらいでした。そのとき読んだのはその初期の一話読み切り型の頃で、まだ漫画自体ほとんど読んだこともなかった自分は、初めて見た少年漫画の展開やダークな雰囲気や絵を「なんかおどろおどろしいな…」と思い、なんとなく「コワイ感じの漫画」という印象を持っていました。小学生の頃にアニメが放送されていたものの、なんせ田舎だったためチャンネルが映らず、有名なセリフやよく聞くモンスターの名前以外はほとんど知らないままでした。
手に取ったのはそこから時はだいぶ飛んで学生時代、作業BGM代わりにYouTubeをよく使うようになった頃です。スマブラXが発売されたあたりからだったのか、ゲームやアニメの映像を使ったMADの作成がかなり流行していました。サジェストによく遊戯王MADのサムネイルが出ていたので気になり、試しに見てみると完成度が高い作品が多くて原作に興味がわき、思いきって文庫版コミックスを全巻大人買いしたのでした(極端行動人生)

初めて見た遊戯王MADがこれだった どこからこんな発想が…?

そしていざ原作を読んでみると、総じてテンション高いアニメMADの雰囲気から想像していたのとはだいぶ違っていて驚きました。60話「決闘者の王国編」から非日常的なカードゲームバトルを主体にした流れが始まるまでは、意外と素朴というか身近というか内向的というか…「友達付き合い」「劣等感と憧れ・悩み」「淡い恋愛感情」「心の弱さをどう乗り越えるか」「アイデンティティの確立」みたいな、教訓的かつジュブナイルっぽいテーマで構成されていて、これはこれでいいじゃん…!と感じたのでした。「主人公が絶対人を殴らない格闘モノ」という作者の信条もいい。
文庫版の作者あとがきを読むと、やはり低迷する人気を上げるためにと編集部によるテコ入れがあり、大幅な方向転換と紆余曲折があったことがわかります。この方の分析記事が詳しいのでぜひ…↓

「闇遊戯が「罰ゲーム!」から「ファラオ」になったことで変わった5つのこと」
https://rootm.hatenablog.com/entry/2020/04/29/231213
https://rootm.hatenablog.com/entry/2020/04/30/141830
やたら細かい感想・考察サイト」様

内省的なテーマを扱っていた自作が徐々にバトル一本に変わっていき、最初考えていた物語の構想や結末を大きく変更しなければならなかった作者の苦労がしのばれます…。作者本人はロマンチックなことが好きなんだろうなというのも場面場面に感じるし、まるで添え物みたいになってしまったヒロインも本来はもっとテーマに関わってくるはずだったんだろうなと思います。今はどうかわからないけど、当時だとなおさら叙情的な内容を少年誌でやるのは難しかったんでしょうね。漫画や文章の端々から作者の遊び好きで無邪気な人柄を感じ、本人が遅咲きの漫画家であったことなども思うと、連載自体がバトルみたいな週刊誌上でやっていくのは大変なことも多かっただろうなあ…と勝手に想像してしまう。

結果的に作品としては成功しているし、初期から変更された後の設定もいい感じに厨二心が刺激されるものではあるし、最終話は演出やメッセージ性も見事にまとめられているし、漫画原作の続編である映画『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』のハイテンションでオカルトでぶっとんでるあの味わいやテーマもよかったし好きなのですが、しみじみした寓話めいた作品を好む自分としてはぜひこの初期の雰囲気と構想設定で続いていた場合の結末も見てみたかったなと思うのでした。中学時代に漫画持ちの友達が貸してくれて読んだ『シャーマンキング』でも同じようなことを思った記憶があります、これもバトル展開に入るまでの連載初期、読み切り形式の話の方が好きだった。少なくとも90年代のジャンプでは、自分のようなやつが好きな雰囲気の話はターゲット読者の要望とは真逆だったんだろうなぁ、もったいない…。(意見には個人差があります)
なんとなくアニメをやってるのを見たことがあるという人やパロディでよく見るという人には、もしも機会と興味があるならば、個人的にはアニメより先に原作漫画の方をチェックすることをおすすめしたいと思っています。

過去にこういう話を職場の同期にちょっとしたら、あまり口に出したことない趣味に関する断片的な情報からいつの間にか私は職場内で「恐竜とドラゴンと遊戯王とハリー・ポッターが好きな人」として認識されてしまっていました。小学生男子か?
でもそのおかげで(面白がられて?)ことあるごとに関連情報やグッズをもらってしまったりで、温かい職場だったな…大変なことも色々あったけどいい思い出です。ついつい自分を隠しがちになるけど好きなものの話をするのっていいことなんだなと思えた記憶でした

こういうのが好きなんじゃ

高橋和希『遊☆戯☆王』文庫版2巻、集英社、2007年(単行本をスキャン)


21話のこの最後のページの雰囲気とか、何気ない描写の端々に美を感じて大好きですね…静けさ寂しさ慈しみ、世のことわりとノスタルジー…
気づけば好きなものがことごとくこういうトーンばっかりになってる自分は哀しみのオタクってやつなんだろうな〜

余談

目元や色味やオクト・エキスパンションのあのボンデージめいたファッションなどから、私は初めて見たときから勝手にタコガールに闇遊戯みを感じているのですが、改めて上の引用ページを見ると自分の描く漫画内の8号はなんとなく表遊戯に似ているかもしれない…と感じました。そんなに読み込んでいるわけでもないしファンアートこそ描いたことなかったけど、知らず知らず影響は受けてたのかもしれないですね。人よりだいぶ遅く今頃になってようやく自分の価値観とか好みがはっきりわかってきた気がするなあ…

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「きえたみらいとおもいでの」への2件のフィードバック

  1. ぷりんさんこんばんは!お久しぶりです、じゃんだら琳です。
    先日はこちらのブログにコメントありがとうございました!
    ご返信が遅くなり申し訳ございません!!

    2年間まったく更新していなかったにも関わらず、訪問履歴から訪れてくださっていたことに気づいて、嬉しい気持ちと申し訳なさでいっぱいです…!
    ネット上での交流が減ろうと、自分の中でぷりんさんはネット世界で出会えた始まりの人であり大切な人なので、年賀状は遠慮なく送り続けますよ!!!

    SNSでの交流はその気になったときで問題ございませんので!
    自分もTwitterを始めたころは、人に勧められて渋々始めたものの「何が面白いんだろう…」とずっと思っていました。
    今ではゲームやアニメ、お店やテレビの情報もネットで発信されている時代なので、むしろTwitter開かないと情報が追えないぐらいにはなってますが(笑)

    特にpixivは昔ほど交流する機会もないかなと思っているので
    (自分がもうずっと一次創作の交流企画に参加していないだけで詳しくはわかりませんが;)、
    こちらは交流というより、この人の絵を見たいな~という方をフォローするだけな感じですね。
    もともと仲のいい方とはマイピクになったり、です!
    自分も言うほど絵を投稿しているわけではないので、無理せずとも大丈夫です!

    Twitterもツイート頻度が比較的減っているとはいえ、自分をフォローすることでTLに余計なツイートが現れてしまうことは事実ですし、本当にその気になったときでOKです!
    こちらも時々こっそり覗かせていただきますが、もしいつか…がございましたらぜひ!!

    インターネット老人もですが、今回のぷりんさんの記事を見てMADの懐かしさに大爆笑しました(笑)
    (崖の上の翼神竜(?)…友人が当時ずっと歌っていて頭にこびりついてます)
    でも思い返すと、このニコニコ動画が盛り上がっていた時期って10年前ぐらいなんですよね。
    個人サイトが栄えていたのも そんなに昔のことじゃないって思うと、時代の流れは早いな~と改めて感じます。

    年下の人と話すと ある程度のジェネレーションギャップがあってショックを受けたりしますが、あの頃はあの頃で純粋に楽しかったなと本当に思います。
    (俳優の阿部寛さんの公式HPが話題になったりしますが、あの感じとても好きです。笑)
    あの時代があったからこそ、こうして雑誌で見ていただけの ぷりんさんとも出会えたわけですし!!
    …今はTwitterでより気軽に誰でも会えちゃうわけですが……それはそれ!!!!!!

    絵チャに関しては、実は今でもやってます(笑)
    ほぼ年一ですが、やっぱりリアルタイムで合作できるのって楽しいですね!
    チャットでの会話なのでラグもありますが、それもまた良し。
    ぷりんさんとも またご一緒したいです!!
    いまは日中でも大丈夫な日がありますし、夜もOKなので是非やりましょう!

    それから、ブログのリンクはお邪魔でなければご自由に!
    マイペース更新で恐縮ですが、あれ以外に自身のサイトらしいものがないもので…(笑)
    こちらのリンク集はすでに勝手に新しいサイトへ繋げさせていただいてます((

    長文コメント送りがちで すみません!
    こちらこそ、これからもゆる~くよろしくお願い致します!

    1. じゃんだら琳さん、お返事どうもありがとうございました!
      は、恥ずかしい…過去の訪問履歴まで全てバレてしまったとは…(足跡残す設定オフっとけよ…)
      自分などがそんな記念的なポジションにいたとは思いもよらず、なんとお礼を言っていいやら…こちらこそ長らくお付き合いいただきどうもありがとうございます!

      SNSの利用の極端な消極さについては、日に日に各所に申し訳ない思いが強まってきております…。
      未だに初期インターネットの感覚を引きずっている自分としては、個人サイト内リンク集>ブログ内リンク集>SNSのフォロー の順で関わり度合いを示すものみたいな印象を持っていたのですが、今では交流が手軽なSNSがすべてに先んずる感じなのかもしれませんね…やはり自分もちょっと変わらなければいけない気がしてきました。今やブログどころか個人サイトなんて持っている人の方が珍しいのだから…
      SNSの、人とのやりとりや関係、アカウントの行動履歴やいろんな数字がすべて公開されてしまう仕組みにどうしても抵抗を感じてしまって交流ツールとしては活用できる気がしないのですが、琳さんのようにすでに交流経験のある方であれば安心してお話しできますので、何かあればお気軽にメッセージ投げてやってください!
      今のところ私のアカウントは意味不明な使い方しかできておりませんのでご覧になっても何も良いことないと思いますが、コメントいただいた場合はすぐ返信させていただきます。というか私からも突然メッセージお送りすることがあるかもしれません!お覚悟よろしくお願いいたします(?)

      突然のジャンル外記事でなんかお恥ずかしいですが共感いただけてうれしい!このMAD有名だったんですね!
      10年で変わりましたね…あの頃はまだTwitterもここまで必須アイテムみたいな扱いではなかった…
      インターネット黎明期のサイトを見ると安心する気持ちわかります。ここも改装前はいにしえのホームページの面影を色濃く残していたのに恥ずかしくてとうとう変えてしまった、しかし前のデザインもあれはあれで愛着あるし良いところもあったと思っています。
      もしも初めてお会いしたイラスト投稿時代に最初から今のようにSNSがあったとしたら、自分は輪に加わらなかったのではないかという気がするので、何事もそれぞれに合ったタイミングとご縁というものがあるんだろうなあと思います。

      なんと今でも絵チャを!? え…ぜひご一緒したいです…
      描くジャンルが昔から大して増えてないのが申し訳ないのですが、もし開催されることがあればご一報いただけたら幸いです!
      最後になりましたが、琳さんのブログをリンク集に追加させていただきました。ご了承ありがとうございました!
      それに際して手持ちの素材で勝手にバナーを作ってしまいましたが、もしご希望がありましたらいつでも差し替え連絡くださいね。
      明日あたりやっと寒中見舞いも投函できそうなので、遅くなりましたが受け取っていただければ幸いです。
      温かいコメントどうもありがとうございました!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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